『作りっぱなしはやめよう。自分たちの作った映画なんだから、自分たちの手で上映していこう』
この単純な宣言のもとに、私たち映画一揆は上映会の企画からチラシ配布、フリーペーパー作成を行い、自分たちが製作してきた映画を自主上映という形で行ってきた。
また自分たちが影響を受けた映画、共鳴する映画を自分たちの映画とともに上映。これまでも大木萠、ほたる、高橋洋、いまおかしんじ、瀬々敬久などの映画作家を招いて彼らの作品を特集上映やカップリングなど様々な形で上映してきた。
そして今回『東京干潟』『蟹の惑星』とスピリチュアル・ムービーズ製作の『漂着物』の上映会を企画する。
『漂着物』は2017年に製作した井土紀州監督作品。2020年に開催される予定であった東京オリンピック後、東京湾の片隅が舞台で、主人公は干潟に流れ着いた漂着物を漁って生計を立てている。その後、『東京干潟』『蟹の惑星』の予告篇を都内の劇場で見た私たちスタッフは『漂着物』を強く想起させられた。そして映画を実際に見て、その感覚が間違いではなかったと確信する。それは舞台が共に干潟であることはもちろんだが、東京オリンピックの影響で変わりゆく土地を見つめるまなざし、また干潟という土地に呼ばれたかのように物語を背負った人間が集まる、ある種の磁場のようなものをカメラで捉えようという意識に作品同士が共鳴しているように感じたからである。今回の特集で作品を続けて見ることにより、干潟という映画的装置の可能性を改めて見つめ直していければと思っている。またこの特集そのものが、東京オリンピックに対する1つの投げかけになればと考えている。
『東京干潟』
多摩川の河口でシジミを獲るホームレスの老人。彼は捨てられた十数匹の猫と共に、干潟の小屋で10年以上暮らしている。80代半ばと思えない強靭な肉体を持つ老人は、シジミを売ったわずかな金で猫のエサと日々の糧を得ている。
しかし近年、一部の人々により無計画な乱獲が始まり、シジミの数は激減していく。また2020年のオリンピックを目前に控え、干潟には橋が架かり、沿岸には高層ホテルが建てられる。
変わりゆく東京の姿を複雑な思いで見つめる老人。彼の脳裏に浮かぶのは波乱に富んだその生涯。九州の炭鉱町に生まれ、返還前の沖縄で米軍基地に勤務し、帰国後、建築会社を起業してバブル期の東京の街を作りあげてきた人生―。
平成から令和へと時代が移ろうなか、多摩川河口の干潟で暮らす老人の生き様から戦後日本の現代史が浮き彫りになる。
監督・撮影・編集:村上浩康
製作:TOKYO HIGATA PROJECT
2019年/日本/83分/HD/配給:TOKYO HIGATA PROJECT
『蟹の惑星』
多摩川河口の干潟は狭い範囲に、多くの種類のカニが生息する貴重な自然の宝庫である。 吉田唯義さんは、ここで15年に渡って独自にカニの観察を続けている。
吉田さんの視点はとてもユニークで、他の人が考えつかないような方法でカニたちの生態を調べている。
映画は吉田さんと干潟を歩きながら、カニたちの驚くべき営みを見つめていく。カメラはカニたちに限りなく接近し、肉眼では決して捉えられない迫力あるフォルムと美しい色彩が画面いっぱいに広がる。そして小さなカニの営みが地球や月など、宇宙とも結びついていることを解き明かし、さらには戦争や震災が与えた現実の問題までを描き出す。
身近な自然に目を向けることの素晴らしさと、都市の中にあるもう一つの世界を描く全編“カニづくし”のワンダームービー。
出演:吉田唯義
監督・撮影・編集:村上浩康
音楽:田中館靖子
製作:TOKYO HIGATA PROJECT
2019年/日本/68分/HD/配給:TOKYO HIGATA PROJECT
『漂着物』
202X年、東京オリンピックの喧騒は過ぎ去り、様々な廃墟と凄まじい量の廃棄物が残された首都・東京。都心から吐き出された多くのゴミは、潮の流れに乗って東京湾の片隅に流れ着いていた。西澤修也は、海辺の廃墟に住みつき、流れ着いたゴミを拾って生計を立てている。隠遁者のように暮らす修也の生活圏に、一人の女・咲が迷い込んできた。言葉を交わし、触れ合ううちに、次第に明らかになる二人の過去。それはのっぴきならぬ事態に二人を追い込んでいくのだった。
出演:細江祐子 本多章一
監督:井土紀州 脚本:小谷香織 井土紀州 撮影:高橋和博 照明:俵謙太 録音:中川究矢 ドローン撮影:上田茂 俗音:近藤崇生 編集:桑原広考 助監督:遠藤晶 題字:翠川英人 プロデューサー:吉岡文平 製作:スピリチュアル・ムービーズ
2017年/日本映画/デジタル/16:9/カラー/ステレオ/32分
■日時|2021年8 月28 日(土)
■受付・開場|15:30
■開映 16:00『蟹の惑星』(68分)『漂着物』(32分)
18:00『東京干潟』(83分)
上映後、村上浩康監督・井土紀州監督によるトーク
19:53 終了予定
■会場|アテネ・フランセ文化センター
東京都千代田区神田駿河台2-11 アテネ・フランセ4階
TEL:03-3291-4339(月曜 - 土曜 13:00 - 20:00)
■料金|1,500 円(一日通し・当日券のみ)
■主催|映画一揆外伝 アテネ・フランセ文化センター
■お問合せ|TEL:090-4395-4852(担当:高橋)
MAIL:spiritualmovies@hotmail.co.jp
■HP|ikkigaiden.exblog.jp
※新型コロナウィルスの感染拡大に伴う影響により、開映時間の変更や席数の制限をさせていただく可能性があります。前日にウェブページでご確認いただくか、お問合せ下さいますようお願い申し上げます